「気に入らないと言われればボツにして潰すつもりでした。やはり羽根は山口洋ありきなので。その位の覚悟でやってます」中野貴

―――山口洋と、ジュエリーデザイナー中野貴さんとのコラボレーション・アクセサリーがツアー会場と、中野さんの店である東京・代官山の「knife *acoustic groove*」で販売されている。山口洋の首にいつもかかっているシルバーの羽根がそれだ。現在販売されているのは、「希望を載せて飛ぶ為の羽根3号」。また、中野さんの店では山口洋のアルバム、ヒートウェイヴの『land of music "the Rising"』も買える。ジュエリーとロック。その関係をインタビューしてみました。
山口洋との初対面は2007年の春だったそうですね。初対面の印象を山口洋は〈駅の近くにぽつねんと佇んでいた氏を観て、「あ、彼が中野さんだ」といつもの私の直感が申しました。情熱と日々と現実の厳しさをすべてひっくるめた上で、独立して魂のこもった仕事をしている人は、鋭くて優しく、そして深い目をしているものです。我々は握手を交わしてすぐに、同じ方向を向いてモノを作っていることを理解し合いました。嬉しい瞬間でした〉と記していましたが、中野さんにとって山口洋の最初の印象はどういうものでしたか? また、当時から、ヒートウェイヴの音楽に触れていたのですか?
中野貴 ボクも「あ、彼が山口さんだ」と直感的に思いましたよ。それは言葉じゃない。無言のまま空中に電気が走った感じ。それだけで充分でした。人知れぬ深い山奥で、初めて自分じゃない他の生き物に出会った感覚? お互いにギラギラしていたかもしれませんね。ボクが深い目をしていたかどうかは判りませんが(笑)。
それはヒートウェイブとの出会いでもありました。初めて手にしたアルバムは『land of music』。1曲目の「ガールフレンド」を聴いただけで「すげぇ こりゃ ただ者じゃないな」と感じました。
その後、山口さんに、「リキッドルームに来てくれよ。そこでしか伝えられないものがあるから」と言われ、会場に足を運びました。凄いインパクトでした。こんな素晴らしいバンドがあったのかと。
―――最初のコラボレーション作品が「eagle talk」と名付けられ、第二弾は、「猛々しく空を飛ぶための羽根」、そして最新作が「希望を載せて飛ぶ為の羽根3号」。それぞれのコンセプト、ふたりで話し合ったことなどエピソード、制作のこだわりを教えてください。
中野貴 まず「espoir」という言葉に込めた意味、何故羽根が必要なのかをお伺いし、とても共感しました。それから「eagle talk=羽根1号」を無我夢中でデザイン製作しました。実際に製作に当たるウチの職人にも事前に羽根の意味を説明しました。意味を知って作るのと、知らないで作るのとでは、大きな違いがあります。平均年齢60歳以上なのですがツアーに間に合わせる為、徹夜に近い日もありました。凄いテンションでしたね(笑)。魂込めました。
その後の「羽根2号」「3号」については、ボクが勝手にデザイン製作しました。山口洋と、それを必要としているであろう人の為に。それぞれの空を飛ぶ為に。そしてボク自身も羽根を必要としているのかもしれません。
羽根2号、3号は完成後に山口さんに見せました。「勝手に作りました。」みたいな(笑)。
気に入ってもらえて良かった。気に入らないと言われればボツにして潰すつもりでした。やはり羽根は山口洋ありきなので。その位の覚悟でやってます。
―――ボックスセット『land of music "the Rising"』や、山口洋のアルバム『Live at Cafe Milton』も、中野さんのお店で取り扱っていますよね。昨年の『land of music "the Rising"』時期には、店内に山口洋のギターの展示まで行なっていたということですが、来店されたり、アクセサリー、CDを購入するヒートウェイヴファンとは、何か言葉を交わしたりしているのでしょうか?
中野貴 ヒートウェイヴファン、素敵ですよ。人として。こっちが教わる事も多々ある。ボクはファン歴2年の駆け出しですが、この音楽を何十年も聴いて生きて来た人々が羨ましい。そんなふうに心の中では思ってます。人が有機的に連鎖する事って、相互通行だと思うんですよ。まさにそれを体感している日々です。まだお会いしていない方も、機会があったら代官山に足を運んでみて下さい。噛み付いたりしないので(笑)。
―――先日のリアム・オ・メンリィとの渋谷でのライヴや、近所の代官山でのライヴなど、山口洋のライヴ会場でかなり中野さんをお見かけしますが、初めての出会いから3年ほど経って、中野さんにとって山口洋の魅力を教えてください。
中野貴 先日海に行って、男2人で飛ぶ鳥を眺めていたんですよ(笑)。山口さんはボクには見えない何かを柔らかな眼差しで見つめていましたね。魅力的ですよ、男目から見て。インディペンダントな1人の男としてのスタンスも素晴らしい。尊敬出来る。
そして過去から含めてどの楽曲も本当に素晴らしいですよね。素で好きです(笑)。彼から生まれて来る言葉も、ギターの音も、全て全てボクにとって崇高なものです。更にヒートウェイブでは、池畑さん、圭一さん、魚さんが絡んで来る訳ですから、たまりませんよね。
山口さんとは、どちらかが死ぬまで絡んで行きたいですし、勝手にそうしますよ(笑)。
knife *acoustic groove*
東京・代官山駅東口(13時〜20時)