アートディレクター渡辺圭一(ヤポネシアン編)


映像作家編に続き、今回はアートディレクターとしての渡辺圭一編。しかも『LONG WAY FOR NOTHING』や『land of music』といったヒートウェイヴのアルバムではなく、2002年、ヤポネシアン・ボールズ・ファウンデーションのアルバム『[アザディ]!?』について。
この、当時も聞き慣れないアルバムタイトルは、アフガニスタンで使われるパシュトゥン語で「自由」という意味。メンバーは、ヒートウェイヴ山口洋、渡辺圭一、ソウル・フラワー・ユニオン中川敬KOKIです。
撮影は、浅草ロック座。アートディレクションを務めた渡辺圭一は、「なんか、はじめにロック座!っていうイメージがあったんだよね。浅草は、渋谷みたいな若者の暑苦しいエネルギーじゃなくて、庶民のエネルギーを感じるのよ。例えれば、チャイナタウンみたいな。もし、世界にリトルトウキョウができるとしたら、渋谷や新宿じゃなくて、浅草みたいな街になると思うよ」と、浅草にロケーションを決めた理由を語っていました。
以下は、「東京地獄新聞」第77号(2002年5月発行)のインタビューより抜粋。
―――今回、ジャケットのアートワークを圭一さんが担当されているんですよね。浅草で撮影しようというのも、圭一さんのアイデアなんですか?
中川敬 圭一と、冗談でね、風俗ありちゃう?みたいな話をしててね。で、ストリップ小屋っていう話が出てきて。オレの中では半分ギャグみたいなとこもあってんけど、ヤツがいきなり検索し始めててね。東京じゅうのストリップ小屋と連絡を取り始めて。すごい行動力やったよ。ホントにストリップが観たいんやと思った(笑)。おねーちゃんとホントに仲良くなりたいんやなって、その気持ちの熱さみたいなんがね、すごい伝わった(笑)。
山口洋 夢野まりあちゃんの巨大なおっぱいが、オレの肩に乗って、ドキドキしとうとき、圭一がそのストリップ嬢に向かって、「もう一枚、脱いでみましょうか」って。すんごいよ、アイツ。アートディレクターとして、たいしたもんだと思って。マジで。
中川敬 「下もさぁ、ちょっと取ろうかぁ」みたいな(笑)。
山口洋 オレに言ってたのはね、「ヒートウェイヴでも、ソウル・フラワーでもないものをどうしても創りたいんだ」って。それは、すごいよくわかる。オレは「好きにすれば」って言うだけ。細かいことはゲイリー(中川)と圭一が決めればいいんだからさ。こんなにタッチしなくていいアルバム創りは、むちゃ楽だよ(笑)。
中川敬 キミはフィニッシュに興味ないしね。
山口洋 無い無い無い、全然無い。過程に興味があるだけ。
―――で、ジャケット、カッコイイですね。これは、タイトルもリンクする?
中川敬 リンクっていうんかなぁ。こんときいっぱい写真撮ってんねん。で、アザディ? 自由ってなんやねん?とかって。それと、このアルバムが持ってるアナーキーさとか、そういうものを一番表現しているのがね、オレら4人の写真じゃなかってん。いまいちパッとせえへん寝ぼけた顔の野郎4人の写真じゃなくて、まりあちゃんひとりの写真が、一番パワーを持ってたっていうね。ファースト・インスピレーションでそう思ったから。いやでも、ホントね、おんなじ商売やな、って思ったよ、オレらと。ステージ立つって意味でも、同じ商売。すごいサービス精神旺盛で。自分が自分が、っていうんじゃない、場の空気っていうか。見事やったよ。すごいエエ娘やったしね。
―――この日、ストリップは観られたんですか?
山口洋 まりあちゃん、トリだったから観られなかった。
中川敬 他の娘のを観た。選曲とか凄かったね。トム・ウェイツとか、ケイト・ブッシュとかね。みんな自分で選んでんねんなぁ、みたいな。