「経験なんでしょうかね、だんだん無駄な成分が削ぎ落とされてきます。その一度膨らんでシェイプされた姿こそ進化だと思うんすよね。ボクらはそれぞれの経験値と少しシェイプされた形で音楽に携われてる」渡辺圭一


写真提供=越智望


―――感想フォームに届いたボックスセット『land of music "the Rising"』の感想から、前回のライヴDVD感想に続いて、今回はアルバム製作の過程を収録したドキュメンタリーDVD「Seaching for "land of music"」の感想をいくつか紹介し、撮影した映像作家の越智望さん、編集した渡辺圭一監督にコメントをもらいました。なお、越智望さん自身が撮影の日々を綴ったblog「yes! with love」もどうぞ。
〈気持ちは揺るぎないけど、過程は揺らいでいるのが出てて、すごく興味深いです。レコーディング映像なんて他のミュージシャンだとカッコいい所ばっかりだと思うんですよね、「どうだ!すごいだろー!」みたいな。でも今回のDVDではレコーディングの悲壮な所も出し惜しみしてないし、なんか凄い人達でも苦労してるんだなって……なんか勇気が出たし! それに池畑さんも今回もスティック作ったりして、見せ方はひょうきんだけど哲学的な感じもしたし。ソロ・ツアーのところはその時の音を、そのまま使って欲しかったなと個人的には思いました。が、演出的にはグァーって感じが出てて気分が高揚! 何度も見てますよ♪〉(30代/男性)
〈越智望さんの撮ったものは、HEATWAVEと、ものすごく長い時間をすごしていないとありえないような映像が随所に見られ、なんとも自然なメンバーの表情に近づけた気がした。渡辺圭一監督の選らんだ映像はすごく、すごく抜けていた。いわゆるドキュメンタリーにありがちな時系列は、ぶっ飛んだ編集で逆に時系列であり気持ちよかった〉(40代/男性)



越智望 『the Rising』楽しんで頂けているなら何より嬉しいです。ありがとう。ヒートウェイヴの撮影でも他の取材の時もドキュメンタリーを撮る上で大切に考えていることがあります。それは「ミイラ取りがミイラになる」危うさを持ったすれすれの取材をすること。良くも悪くも。そんな映像にこもる体温のようなものが好きで、これはドキュメンタリーの先人たちから学んだことでもあります。
レコーディングの撮影で苦労したのは、たとえば何かの曲を作り上げていく時に、わかりやすいディスカッションなどがあまりなかったことです。
本編の中の「Prayer On The Hill」のリハ風景にあるように山口氏がアイデアを持ってくると、それに対してメンバーがそれぞれにインスピレーションを膨らませて演奏を始めるという感じがほとんどでした。力みがないんですよね。そんな面は面白くもありました」



―――次の感想は映像のプロの方からのようです。
〈おもしろかったですね。私も映像編集に携わってるけど、わかる部分と、なんでこのつなぎっていう意外性が楽しすぎた。実はオープニングのシーンが気に入って何度も見ちゃいました。とりとめのないカットをつないでるみたいなところもあり、ジャームッシュみたいとかおもっちゃいました。アルバムと関係ないけど、池畑さんと犬。うん。池畑さんがいい。車を運転する姿とかもだし。そんな池畑さんのドラミングもライブとは違う繊細さも感じられたかな。ブラシとかタンバリンとかの使い方が。あんな池畑さんを見たこと無かったんで。あとはフリージアで青春の記念にもう一回とかいう会話がいい〉(30代/男性)


渡辺圭一 DVD、何度も楽しんで頂いてるようで良かったです。オープニングで始まる草むらのシーンは実はボクが唯一カメラを持って撮ったシーンなんですよ。監督の話があった時にまず最初に思い出したのが、あのシーンだったんです。頭の中でDVDをトレイに乗せてプレイボタンを押してみると、そのシーンしか浮かばなかったんで最初から決めてました(笑)。そのあとも4〜5分くらいは割とスイスイと繋いでいけたように覚えてます。
池畑さんはどのシーンでも絵になる。あの牧場でのくだりはボクも好きなとこです。あの牧場もまるで池畑さんがオーナーかのように見えるとこがすごいです。愛犬に愛馬も登場してね(笑)。スティックのシーンはおかげさまで皆様に好評いただいております。当初、何作ってるかこれ見た人はわかるかな?と心配してましたが……。シリアスでもコミカルでも様になってるのが器の大きさを感じますね。
今回、メンバー映像がバランス良く出てるかを考えましたね。自分で編集してるんで、どうしても自分の登場時間が減ってしまい、よくオッチー(越智望)に「圭一さんが少ないじゃないすか!」とか注意されてましたが……。そこは監督の特権で、オレは変な顔してるからいい!と結構カットもしましたし(笑)。あと、「青春の記念にもう一回」はレコーディング中何度か出ていましたね。まぁ、いわゆる想い出作りの事です。そのうち青春の記念テイクだけでアルバムが出来るかもしれません。『想い出のland of music』(笑)。
DVD、まだ見てない方は急いで是非!



―――こちらの方は福岡のアマチュア・ミュージシャンだそうです。
〈山口さんと圭一さんはアマチュアの時から、ずっとずっと憧れてる存在です。池畑さんは僕にとっては自分の前のバンドの時に一緒にリズム隊を組んでたドラマーのテルちゃんのアニキという存在であって憧れですし。曲を作っていくというかアレンジが変わっていったり曲が完成していく過程が、同じような作業をしているんだな〜と思いました。もちろんプロとアマではえらい違いですけど、ドラムの音作りでのみんなの感想とかもなんとなく分かる気がしました。色んな楽器を試したりしていって、やっぱこれだ!!路線が決定しました!!といったトコもすごくバンドとして生きてる感じがして共感できました。録り直すうちに煮詰まったりも分かります。おんなじことやってたんだな〜と思いながら見てしまいました。あと圭一さんがジャケのサンプルを持ってきたときに山口さんが最初に「寒いんだよね〜」と言って、なんとなくシーンとした瞬間も、自分も同じような事があったから何かわかりました。その後に魚さんの「いいと思うけど」っていう感じも。ミックスに関しても四苦八苦してるとこを魚さんがボスッと「こことここを」みたいな感じで直していくのを山口さんがハッとした顔で聞いてるのが印象的でした。ヒートウェイブってそれぞれがそれぞれの専門家というか職人の集まりみたいだな〜って思いましたよ〉(30代/男性)


渡辺圭一 感想ありがとう。バンドは当然イキモノなので、紆余曲折、試行錯誤、細胞分裂を繰り返します。アメーバみたくいろいろ飲み込んだり吐き出したり。長く成長してるとそれぞれ得意分野みたいなのが生まれてきて、自然とまたコンパクトに戻っていきます。経験なんでしょうかね、だんだん無駄な成分が削ぎ落とされてきます。その一度膨らんでシェイプされた姿こそ進化だと思うんすよね。ボクらはそれぞれの経験値と少しシェイプされた形で音楽に携われてる。なので大変なんだけど、こんな環境を感謝してます。偉い人の決済もいらんしね。そんなストーリーをDVDから感じ取ってくれたのなら、ものすごく嬉しいですね。DVD、まだ見ていない方は深く考えず是非!