「音楽の奇蹟は『正しい時に』、『正しい場所』で起こるもんなんだよ。それは偶然じゃなくて、必然なんだ」山口洋

撮影=山口洋

すでにホームグラウンドのひとつとなった宮城県白石市のCafe Miltonで2月21日(土)、2009年初の山口洋ソロライヴが開催されます。山口洋とCafe Miltonのマスターとの対談は当blog第33回で。では、今年初の山口洋インタビューをお届けします。
―――昨年のソロツアー“on the road, again”最終地がこのCafe Miltonでした。そこでライヴレコーディングを試みたと日記にありましたが、その中には「これを盤にできるどうか、それは聞いてみて決めようと思っている」という言葉もあり、その合否が気になっています。どうだったのですか?
山口洋 それはね、秘密です。
ちょっとミステリアスな方がいいやろ(笑)。このアルバムを作ろうと思った動機はね、僕らのライヴ盤と云えば、いつも(ほぼ)東京のものばかりだったのね。でも、僕のソロ・ツアー“on the road, again”は小さい街をできるだけ多く、廻るのが目的だった。そんな意味で人口2万人くらいの地方都市にある「land of music(音楽の場所)」―ミルトンでのライヴ盤ってのはとってもいいなと思ったんだ。でも、小さな空間のライヴを「内輪受け」ではなく、グローバルな質感に仕上げるのはとても難儀な作業で、一時頓挫してる。客席との距離も近すぎたし、それをミックスする俺の立ち位置も近すぎたんだ。
でもね、最近、作業を復活させた。ちょっとだけ光が見えたんだ。小さな空間をできるだけ「小さく」表現することによって、逆にグローバルな音になるんじゃないか、と思ってね。
僕が歌ってる場所(ステージとは呼べないくらいの狭い空間なんだけど)の横に薪ストーブがあってね、お客さんが薪をくべるんだけど、それが燃える音がずーっと入ってるよ。
そんなライヴ盤、聞いたことないよね? 僕もない。もし、完成したら、人々が仕事から帰って、自宅でもライヴを追体験できる。そんなものになればいいと、と夢想してるんだけど。音楽の奇蹟は「正しい時に」、「正しい場所」で起こるもんなんだよ。それは偶然じゃなくて、必然なんだ。それを伝えたいと思って、フントーしてるんだけど、ね。
―――長田弘さんという詩人に〈まず旅があり、そのあとに旅の話がある。しかし、旅の経験を決めるのは、じつは旅そのものでなくて、旅のあとの旅の話だ。旅の話をするというのは、どんな旅をしたかと語るということだ、それは、旅のあと、旅の経験へむかって、もう一ど旅をするということだ〉という言葉がありました(鶴見俊輔長田弘『旅の話』より)。3年に渡って、100カ所以上のライヴというこの“on the road, again”、ライヴ盤という音源での集大成もそうですが、旅の軌跡を記録したweb上の日記も、本という形にできたらと思っています。いかがでしょう?
山口洋 長田さん。大好きだよ。詩が素晴らしいのはもちろん、「アメリカの心の歌」っていう新書があるんだけど、その中のグラム・パーソンズとエミルー・ハリスの記述が大好きでね。
そうねぇ、最近思うのは「道そのものが答だ」ってことかなぁ? 何処に向かっているのか分からなくてもね。大地に二本の足で立って、空を見上げて、それでも自分の道を行くことだと僕は思うよ。
そうね、ライヴ盤と本でってのはいいと思う。俺ね、同時に二つのことが出来ないのよ。だから、早く盤つくって、本も仕上げて、新しい曲に向かいたい。じわじわと前に進んでるから、ちょっと待っててね。
―――先日の横浜でのリクオさんとのライヴにも、Cafe Miltonのマスター夫妻は宮城県から足を運んでくれたそうですが、2月21日のライヴについて何か話しましたか?
山口洋 いや。何も話してない。横浜のライヴもそうだったんだけど、動機そのものがね、リクオが「サムズからオファーあるんだけど、やる?」「いーよ、もちろん」みたいな感じなんだ。最近。もちろんバンドだとこうは行かないんだけど、ソロの活動に関しては、軽過ぎるくらいのフットワークが丁度いいかなって。
2月21日もね、「歌いたくなったんで、行っていいすか?」って。「もちろん」って。以上。
みんな、雪を冠した「蔵王」観たことある? どの方面から観ても、そりゃー、どえりゃー美しくて凛々しいんだよ。
ライヴをやる動機なんて、それでいいじゃん、と最近思うんだよね。
山口洋 Milton again 歌いたくなったから
2月21日(土) 宮城県白石市・Cafe Milton
宮城県白石市八幡町6-18-1)
開場/開演=17時/開演18時
チケット料金=4,000円(整理番号付)
チケット=カフェミルトン店頭、電話にて販売中
問=Cafe Milton(TEL 0224-26-1436)