「山口洋、脱皮しました。これからは新しい歌を書きながらの旅になると思います」山口洋


撮影=山口洋


―――7月は長野から沖縄まで、山口洋リクオ「THE HOBO JUNGLE TOUR 2008」の追加が8公演ありました。リクオさんの日記(KIMAGURE DIARY)がとても読み応えあるのですが、ツアーファイナルの那覇(7月15日)の日記には、〈今回のツアーは、同じステージに、同じ立場で、自分とは違うもう一つの個性が存在していることによって、気付かされ、考えさせられることが多かった。とくにこの3週間は、いろんな意味で内容の濃い、実に印象深いツアーになった。〉と記されていました。山口さんも、音楽生活を始めて以来、これだけ、ふたりきりでツアーをするという経験は初めてだったと思うのですが、いかがでしたか?


山口洋 うん。そうねぇ。俺が個人的に、今までの自分を見つめなきゃ前に進めなかった時期ともかぶってたんで、それは自分がかろうじて立ってた場所を自ら破壊することでもあったんで、旅をしながら、それをやるってのは、とてもハードな事だったんだけど、今となってはハードだったがゆえに、音楽があって、毎日違うライヴをやらかして、なおかつ過去の自分を振り返りつつ前に進むってことが、出来たんじゃないか、と思うよ。セルフィッシュに伝わると、嫌なんだけど、俺、このツアーをやって、自分が好きになったよ。それもこれも、リクオや協力してくれた人や、たくさんの街や足を運んでくれた人々のおかげさ。
リクオとはね、家庭環境がすごく似てたりするのよ。でも、まったく似てなかったりもするのね。ライヴと云う場所での反応の仕方もまったく違う。でも、互いに「手癖」で難局を乗り越えようとしなかったことが、俺はとても好きだったね。このツアーで得た最大のことは、「大事なことを曖昧に話さない」ってあったり前田のクラッカーみたいなことなんだけど、沖縄で最後のライヴをやった後に、互いに感謝しあえる仲間っちゅーのは、そうは居ないんじゃないかと思ったね。
奴が旅慣れてることに、随分助けられもしたし、俺、ゲロ吐いてるところ、人に見られたのも生まれて初めてだったんだけど、この経験をバンドに持ち帰って、来年はバリバリやるよ。
もちろん、リクオとのツアーもまたやるかもしれないし。
そうそう。奴のベスト盤のデザインを、『land of music "the Rising"』を共に苦労して作った渡辺太朗がやってるちゅーのもいい話だったな。



リクオ ベスト〜アーリー・イヤーズ1990-1995
(2008年8月6日発売)


―――驚いたのが、ヒートウェイヴがマンガ『クッキングパパ』の実写ドラマ化のサントラを手がけたというニュース。これは福岡が舞台で、主題歌も藤井フミヤさんと財津和夫さんという福岡出身ミュージシャンが担当しているということだそうですね。サウンドトラックは、アニメ『機巧奇傳 ヒヲウ戦記』のレコーディング以来ですよね。


山口洋 うん。それは福岡が舞台だってこと、俺たちが初めてテレビに出た放送局(テレビ西日本)の開局50周年記念(8月29日放送)だってこと、プロデューサーにどうしても、と熱く説得されたこと、エトセトラ。あの街に育たなければ、音楽をやってなかったかもしれない。だから、おこがましいけど、育んでくれた街に、恩返しがしたかったんだよ。
プロデューサーがね、無意味に熱い男でね。「僕にはアイルランドと福岡を結ぶ山口さんの音楽が聞こえてきます」みたいな。「何じゃ、それ?」と思ったんだけど、俺はその想いに乗ってみることにしたんだ。バンドで。だから、トラッドに影響を受けて作った「出発の歌」をモチーフにしたり、山笠のイメージで曲を書いたり、それらを有機的に繋げることを考えて作る作業は愉しかった。監督さんもとっても好きな人だったしね。ここからの作業は完全に俺の手の届かないところにあるから、どんな作品に仕上がってんのか、俺も楽しみにしてるよ。HEATWAVEは素晴らしいバンドだよ。俺、あらためて、そう思った。



―――8月7日からの、ソロツアー「on the road, again vol.4」も、都留市松山市、吉祥寺、鹿児島市宮崎市、 神戸市、広島市山口市岡山市名古屋市長野市での合計11会場での追加公演が決まりました(全24公演のスケジュールはこちら)。旅立ち前の一言をお願いします。


山口洋 山口洋、脱皮しました。これからは新しい歌を書きながらの旅になると思います。是非、気軽に足を運んでください。待っとるよ。