「潮騒ってのはリズムで、永遠の音楽。都会と海辺と山の中。それらを行き来してる俺は幸福だと思う」山口洋

撮影=山口洋

―――山口洋 ソロツアー「on the road, again vol.4」は、第二クール、またしても嵐に襲われた宇都宮、「食と音楽」という新たな試みを行なった白石、危うくライヴ日程を間違えそうになった千葉オープニングアクトのユダさんの日記はこちら)など、旅の日々は続いていますが、山口洋は、9月27日(土)神奈川・江ノ島でのイベント「第3回 海さくらコンサート2008」への出演が決まりました。
そこで今回は、去年の3月に仕事場を東京から湘南に移した山口洋と、1997年にヒートウェイヴのサイトを立ち上げ、いまもさまざまなプロジェクトに参画し、偶然同時期に東京から山口洋の仕事場の近くに引っ越してきたWEBディレクターの河原崎禎紀さんに、海のある生活について訊いてみました。
山口さんは蔵王阿蘇で音楽を創るというイメージがあったせいか(玄界灘育ちとはいえ)、湘南というのは意外な感もあったのですが、海が近くにある暮らしはいかがですか? 河原崎さんはふたりで示し合わせて同じ地域に引っ越したわけではないんですよね?
山口洋 (河原崎)ヨシ君が俺に惚れてるって説がある(ウソ)。
東京に出てきたころ、息苦しくて、海が観たくて、このエリアの海にやってきたら、砂浜が真っ黒で、「こんなん海じゃねー」と思った記憶がある。でもね、最近思うんだ。海はすげぇよ。夜、海で考えごとをする。潮騒ってのはリズムで、永遠の音楽。都会と海辺と山の中。それらを行き来してる俺は幸福だと思う。それぞれに、それぞれの良さとデメリットがある。何処に行ったって、自分からは逃げられないし。
原崎禎紀 惚れてるから引っ越してきたに決まってますよ!(笑)
それまで、ボクは下北沢という街が好きでその近所に住んでいたんだけど、下北に再開発の話が浮上して、その前段階として数年前から好きな飲み屋が潰れだしたんです。で、潰した所に何が出来るのかと思いきや、駐輪場とかになってる訳です。それもガラガラの。そんなだから、今回の再開発の話を聞いた時に、見限ってしまったというか。そんな時、湘南に住んでいる友達の家に遊びに行って「悪くないな〜」と思ったんです。丁度、アパートの更新もあったんで新しい所は探してはいたんですが、かなりいい条件の物件が出たんで、ほぼ勢いで決めてしまいました。
引っ越しの直前、段ボールに囲まれながら、ふと山口さんの日記を見たら、江ノ島の写真が載ってるじゃないですか! 湘南に仕事場を移したということで、もうビックリしてすぐ連絡入れた訳ですね。
下北が好きという話を書きましたが、渋谷も好きだったんですよ。というか、大学で東京に出てきてからほぼ、渋谷を中心にして20年以上生活してましたから。でも、自分の好きだった渋谷(に限らず東京の多くの街)の魅力がかなり薄れてしまった。所謂「ファスト風土」化ってヤツです。
山口さんが日記で、よく触れているようにそれは特に地方に顕著なんでしょうが、東京にもその波は否応なく押し寄せてきて、ボクにとっての東京の魅力「(聖俗併せ持つ)多様性 」が喪失しつつあるように思えてなりません。そんな潮流は渋谷、新宿、六本木といったターミナルエリアだけでなく、下北沢などの個性的な街にも押し寄せています。「再開発」や「浄化」とお題目は様々ですが、理にかなう文句の付けようのない理屈の元、地ならしされた後、やってくるのは決まったようにチェーン展開する大規模モールやファストフード店、ディスカウントストアといった日本全国お馴染みの店です(最近、驚いたのは渋谷クアトロのビルがブックオフに殆ど占有されていたこと)。そんなプロセスを経て、「バリアフリー」で「災害に強く」、「犯罪の少ない」素晴らしい街に変貌を遂げていくのでしょう。でもボクはそんな「素晴らしい街」にさほど、魅力を感じない質ということもあって、引っ越したというのも理由のひとつです。但し、下北の件に関しては、自分が散々、楽しさを享受した上で、さっさと引っ越してしまったのは、既得権者の勝ち逃げのようで、かなり心が痛みますが。
勿論、こちらにも「ファスト風土」的なお店は沢山ありますが、やはり海の存在は大きいですね! 自然に早寝早起きになったし(生涯無理だと思っていた)、手習い程度ですが、ランニング始めたり、遂にはサーフィンまで始めてしまいました。「いったい、オレはどうなってるんだ?」という感じです(笑)。
山口洋 えっ? ヨシ君、サーフィンやってんの? 何で、俺に黙ってんの? あはは。今度、俺が激写(古っ)したげるから。ブロマイド(古っ)作ろうか? でも、確かに海の存在は大きいよね。ヨシ君云うところの「ファスト風土」化しようがないもんね。海は。海の家を除いて。旅を重ねてるとさ、「街」には成り立ちに必然性があるのが分かるんだよ。街道沿いの宿場町とかさ。そんな意味では、「人工的」な成り立ちの街ってのは、俺は怖いんだ。ラス・ヴェガスとか、六ヶ所村とか。圧倒的に不自然なんだよ。で、湘南はユルい。ロッカーにもwebデザイナーにも優しいってとこはあるよね。
―――今年になって、リクオさんも近所に引っ越してきて、3人で会う機会も多々あるようですが、プライベート・ライフについて、何かエピソードを教えてください。
山口洋 俺が先に応えろってか? まぁ、俺も充分に酒飲みなんだけど、最近酒席があんまり好きじゃなくて、あの二人につき合ってると、とことん行ってしまうので、奴らが「ま、今日は怪我とかしないだろう」ちゅーことを確認したら、さっさとバックれます。ヨシ君はね、何だかお裾分けしたくなる人です。コロッケ作って持って行ったりとかね、彼と接してると、近所のおばさんみたいな気持ちになります。何でだろう? ヨシ君も田舎に帰ると、必ず「新茶」とか「梨」とか持ってきてくれます。俺たちおばさんかもね?
原崎禎紀 確かに酒飲むとトコトン行きがちかも。酒そのものというより、楽しい人たちと飲むあの雰囲気が好きなんですよ。でも、都内で飲むと終電が気になっちゃって。日を跨ぐと帰れなくなるから、もうシンデレラ並に時計と睨めっこだから飲んだ気がしないですけどね。でも前にリクオさんと東京から帰った時は結構、飲んだにも関わらず、素晴らしい連携で奇跡的に乗り過ごしなく帰れて、感動しましたよ。
山口さんが持ってきてくれたコロッケは感動したな。あんまり旨いから一気食いしたら、その夜、胃がもたれて眠れなくなったけど。コロッケに限らず、色々な美味しいものを頂いちゃって恐縮することしきりなんですが、殆どデイケアかも。こっちに引っ越して来て再開したもので自炊もあるんです。何だか料理も楽しくなったんで今度はボクが腕をふるいたいですね。現在のオレ・ベストは「ショウガ焼き」なんで、今度、舌鼓を打たせたいです。お互いおっさんだけど、まあ、おばちゃんでも可ということでいいんじゃないでしょうか。
―――日本中をまわってる山口さんにとっても、現在の地元といえる湘南・江ノ島でのイベント出演は初めてですよね。江ノ島までやってくるファンに向けて、江ノ島の見どころを教えてください。
山口洋 あそこはね、まだ昭和が残ってるんだよ。寅さんチックな光景が。本当は教えたくないんだけど、奥まで行くと、お茶屋さんがある。海が見渡せる。店名はひ・み・ つ。自分で探しなさい。おばちゃんと仲良くなって「おばちゃーん、何時に閉まるのー?」って聞くと、「日没までだよー」ってさ。
イベント主催の「海さくら」はいつまでも、江ノ島を大事にしようって、ゴミ拾いを続けてるのね。是非彼らのサイトにもアクセスして、その心意気を受け取った上で、イベントに来てくれると嬉しいっす。
9月27日 (土) 第3回 海さくらコンサート2008
http://www.umisakura.com/concert/c080927.html
江の島展望灯台サンセットテラス (雨天・強風時会場:神奈川県立かながわ女性センター)
出演=山口洋リクオLeyonaイノトモ古謝美佐子/Harf Moon(順不同)
司会=永田実
開場/開演=13時30分/14時
チケット料金=4,500円(全自由/税込)
チケット販売=チケットぴあ(Pコード:298-079)