映像作家・渡辺圭一インタビュー 1/2

デザイナーとしても『land of music』『LONG WAY FOR NOTHING』『Live at Cafe Milton』のジャケットなどを手がける渡辺圭一が、ルースターズのライヴDVD『IN THE MOTION』(今年4月発売)を監督しました。
映像作家・渡辺圭一として、当blogでも当然『land of music "the Rising"』について第6回第18回でインタビューしていますが、今回は映像作家としてのキャリアのスタートとなった、2004年、ヒートウェイヴツアーDVD『OFFICIAL BOOTLEG』インタビューを抜粋して紹介します。
最初に出てくる文字は「HEATWAVE presents」。SHIBUYA-AXの楽屋、カメラを手にしているのは渡辺圭一。本作品の監督。山口洋池畑潤二池畑潤二と細海魚、次々と交わされる握手。そのカメラの動きから、これがアンコールでステージに出ていく直前の生々しい映像ということがわかる。ステージに登場し歓声で迎えられるメンバー。これがツアーDVD『OFFICIAL BOOTLEG』のオープニングだ。
SHIBUYA-AXのライヴシーンを除いて、撮影はツアースタッフか渡辺圭一が行なっている。専属の撮影スタッフがいたわけではなくて、それぞれの仕事をしながらの撮影だから(つまりリハーサルを撮ってた映像があるということは、その間は仕事をサボってたわけ?)、東京公演以外のライヴシーンは少なく、その分オフステージの映像は、たぶん読者の想像以上に多い。 手持ちのデジカメならではの機動性と(その分、ブレたりしてるところや、東京以外の会場のライヴ映像が固定ワンカメなのもBOOTLEGっぽい)、メンバー&もっとも身近なOFFICIALツアースタッフが撮影している、というこれ以上にない密着感。これが『OFFICIAL BOOTLEG』のタイトルの由来か。
地獄新聞89号で語られた、金沢シジミ中毒地獄や大阪フォークデュオ、バッティングセンターでの殿馬化した細海魚の秘打、池畑潤二劇場など、さまざまなツアー・エピソードが映像で追体験できます(食中毒なんて体験したくないけど)。
しかし、しかし、これが楽屋落ち的ツアー珍プレー集で終わらないのは、要所要所に挟まれるSHIBUYA-AXでの全5曲のライヴ映像があるからだ。「なんで"ビール早飲み選手権"なんてやってんだよー、この人たち(←真似しないように)」なんて思っても、ライヴはかっこいいのです。ツアーに参加した人はもちろん、このバンドのライヴを観たことない人にぜひ観てほしい作品です。渡辺監督素晴らしいです。ということで「東京地獄新聞」第91号(2004年9月発行)のトップ記事は渡辺圭一インタビューです。
渡辺 もともとさぁ、ツアー始まる前にみんなでミーティングして、DVDを作ろう、そのためにカメラを回そうよって始まったことじゃないでしょ? おぼろげに覚えてるのは、とりあえずなんか使えるかもしれないからカメラ回しておこうよって。でもツアースタッフがワンカメでただ撮ってただけで。アイツも後でどういうものになるか、まさかDVDになるなんて思わないから、ただ観光記念みたいな気分でボタン押してただけでしょ。で、チョコチョコ撮ってるうちになんかおもしろそうだから「オレにも撮らせろ」って言って、オレが撮ったりしてたんだよね。
―――ツアーの途中で、DVD作ろうみたいな話になったんですよね。
渡辺 カメラ回してるんだったら記念になるものを作りたいねって話はあったけど、そのときは全く具体的じゃなかったよ。最初は次のツアーのときに何かリリースしたいねという意見もあって、CDが出せたらいいなということで各会場でテープを回して録音しとったわけでしょ? そのおまけで映像のDVDがあればいいでしょって。それがツアーが終わる頃にはおもしろいシーンを押さえ出して……。だからツアー最初のほうの映像はあまりないもんね。
―――でも、SHIBUYA-AXのときはもう自分でカメラ持ってステージに上がってたわけですよね。その時点で構想…とまでは大げさじゃないかもしれないけど、こんな映像があったらおもしろいな……ぐらいの考えはあったんですよね?
渡辺 確かに、ミュージシャン=当事者としての視点というのはおもしろいだろうなとは思ってた。オリンピックでも、開会式とかで選手がカメラやDVDカムを持ってるでしょ。選手が見てる映像、観客に囲まれた独特の空気というのは、オレたちにはわかんないもんね、その視点を知りたいっていうのはあるじゃん。そのカメラの映像を見てみたいって。どんなこと話してて、どんなに盛り上がってんのかとかさ。
―――圭一さんからいろいろアイデアが出たから、「オマエが監督やれ」ということになったんですよね。もともと映像を作ることに興味はあったんですか?
渡辺 おぼろげにね。でも自分のキャパシティの底がわかんないから。ソフトなんかも知らなくて、映像ソフトって何? どのソフト使えばいいの?っていう(笑)。たとえばオペレーターの後ろでふんぞり返って「この画を先に入れて、フィルターかけてどうのこうの」って指示するんだったらまだわかるよ。でも予算の都合上、スタジオ押さえられるわけじゃないし、そういう人もいないし……。まずはヒロシ(山口洋)が20何本のテープをデータにしてくれた3時間分の映像があったでしょ。それをコンピュータの画面に出すだけで何週間か過ぎた。その間に2つのソフトを覚えたからね。わかり始めたときは楽しいよ。大体、こうしたいけどそのためにはどうすればいいんだ!?ってとこで停滞するじゃん。映像に文字を入れたいのに文字の入れ方がわからん。最初に「HEATWAVE presents」っていう文字を入れるのに2週間ぐらいかかった(笑)。で、20分間分ぐらい作ったときに、じゃあこの方向で進んでいけばいいんやって思ったのに、そこから(映像編集ソフトが)「ファイナルカット」に移ったじゃん。それまでに出来上がったのをそのまま持っていけないわけよ。じゃ、またイチからじゃん。イチから、こっちのソフトで文字を入れるには?って。もー切腹したかったよ(笑)。
―――やっぱり楽しかったことより、苦労したことのほうが多いですね。
渡辺 あー、でも苦労とは思ってないよ。これも試練だし。だって何らかに役立つことじゃん。そのときにものすごく知識のある人が横にいたとしてね、訊くのは簡単だけど、それじゃたぶん身につかないと思う。そうじゃなくて自分で調べる、それがいい。自分がこうしたいというためには研究するじゃん。それが大事かもね。(続く)