映像作家・渡辺圭一インタビュー 2/2

昨日のエントリーに続き、映像作家・渡辺圭一インタビュー後編。映像監督としての処女作、2004年のヒートウェイヴツアーDVD『OFFICIAL BOOTLEG』について。「東京地獄新聞」第91号(2004年9月発行)より。
―――ところで、最初からおぼろげにでも全体像があっって、こういうものにしようと思い描いて作っていたんですか?
渡辺 ん? ないないない。そんなもんまったくなし。たぶんプロの映画監督や、普通監督とかディレクターとか呼ばれる人たちは、(構想を)大体組み立てあげてから撮影に入るよね。当然絵コンテもあるだろうし、最初にこういうシーンが必要だというのもあるわけでしょ。たとえばスクリーンの色までわかってて荒い映像にしたいとか。でもそんなのわかんないから。まったく何していいかわかんなかったから。
―――でも、いわゆるプロの人じゃなくて圭一さんが作ったことで、結果的に圭一さんなりの自分らしさが出たと思うんですよね
渡辺 それはメンバーだからさ。素材の中からこのシーン、あのシーンってチョイスするのは、メンバーであるオレじゃないとできないことじゃないかなとは思う。普通の人はたぶんこれ出したらマイナスだろうなって思う画でも、オレの視点から言ったら、イメージとか関係ないから。でも、もうちょっとねぇ……とか思って。会場じゃないところで、金沢だったら金沢で、兼六園を歩いてるところでも撮ろうよとか。そういうことを今になったら思いつくわけよ。最初から作ることが決まってたら食中毒で入院した時も絶対カメラ回してた!
でも(編集は)メンバー、スタッフがいろいろ力を貸してくださってね。魚ちゃんとか迷惑かけたもんね。夜中にコンピュータ動かんとか言って持ってって、「魚ちゃん何とかしてくれ!」とか。魚ちゃんも「困ったら電話してきてくれ」って言ってくれって。で、朝方6時頃に電話してみて、「起きてる?」って聞いたら、見事に起きてるんだよね(笑)。
今度もしやるとしたら、ちゃんと最初っからプロジェクトを組んで、作るための映像が欲しい。編集するための。それともうちょっと時間を。今回はこの間にライヴのリハとかあって、やっぱり頭の中がとっちらかってくるでしょ。そこを切り替えるのがね。ま、ウチには池畑潤二というすばらしい役者がいるから。ブルーリボン賞だね(笑)。
では続いて、同じく『OFFICIAL BOOTLEG』について山口洋へのインタビュー。
山口 今までヒートウェイヴの作品というのはほぼすべて主体的に能動的に俺が関わってきたわけだけど、映像だけはこの男がやればいいじゃんと思ったわけ。だからもう完全に丸投げ(笑)。あいつのやる気を引き出すために30時間ぐらいあったビデオ素材を4時間ぐらいにカットするところまでは俺も手伝ったけど、あとはもう何もしてない。
あいつのいいところは全体を見てるんだよね。俺はどう見られたいとか見られているというところにあまり興味ないんだけど、そういうところにあいつはちゃんと意識を持ってるんだとわかった。俺が一所懸命やらなくても初めて勝手にできあがったヒートウェイヴ名義の作品だから、すごくうれしかったね。それがうれしくて見ちゃうもん、俺(笑)。見ると、結局池畑潤二という人もみんなすごく愛してて―――池畑潤二という魂の柱がバンドの中心に立っているから―――みんな好きなんだよ、あんな人いないしね。ある種、池畑さんに失礼な編集をしてるかもしれないけど、そういうところを含めてみんな池畑さんが大好きだからね。見た人が「これ、池畑潤二のDVDじゃん」って言うんだけど、「そうですよ」って(笑)。ヒートウェイヴは実はそうだからって。今回の作品は音的には俺と魚ちゃんが担当して、映像、デザインを圭一がやって、(池畑)兄貴は存在自体で大貢献してるわけだけど、今、兄貴がツアーTシャツを作ってるらしくて、バランスよく役目がナチュラルにできてきていいと思うよね。
これからの時代は音楽業界も革新的に変わっていかないと生き残れないと思うし、そういった意味では自分たちの方法論を見つけつつあるからいいんじゃないかなあ。自分たち4人いればできちゃう、大変だけど(笑)。
―――いま、渡辺監督に言いたいことは?
山口 お疲れ。しばらく映像はやりたくないって言ってたけど、それも俺がミックスしててもうしばらく音楽聴きたくないって思うのと一緒で、作る喜びというのは彼も絶対あったと思うんだよね。まあ、また作るんじゃないの? ツアーのドキュメンタリーという形じゃないと思うけど、あいつの新たな才能なわけだから。俺は、今までいろいろやってきて、バンドのメンバーに「今日は疲れてるだろうから早く帰っていいよ」って言ったことはあったけど、「もう帰っていいよ」って言われたのは、今回初めてだった(笑)。KiLAのツアーの合間にちょっとだけ圭一のとことに行ったら圭一に言われたんだ。「俺に任しとけ」って意味なんだけどうれしかったね。DVDは最後まで責任持ってあいつがやったんだよ。