「野獣始動」PLAY BACK


先週のエントリーに続き、山口洋、渡辺圭一、池畑潤二の3人による「トリオ・ザ・玄界灘」が、細海魚を加えた現体制のヒートウェイヴになる過渡期の記事を紹介します。2002年3月25日と同月29日にこの3人でステージに立ち、同年6月に博多の先輩バンド、モダンドールズのトリビュートアルバムにレコーディング参加。そこに、キーボーディスト細海魚を加えた4人編成のバンドが、2003年1月15日、渋谷ON AIR WESTでライヴを行ないます。バンド名の代わりに4人の名前が列記され、ライヴのタイトルは、「野獣始動」。
以下は、その2ヶ月ほど前の「東京地獄新聞」第80号(2002年11月発行)より抜粋した山口洋インタビューです。
〈俺の夢って、みんなが思ってるより実はすごいちっぽけなもので。今までヒートウェイヴの曲でドラムから始まってる曲ってないんだよ。カウントから始まってる曲もないし。もう滅多なことがないとドラムから始まれない。それはなんでかというと、ヒートウェイヴにおけるグルーヴマスターというのが俺だからなんだよね。俺がリズムを人に伝えて、それにドラムが入ってくるっていうふうにしないと、俺が思ってるいい音楽にならなかった。俺が人を信じてないっていう言い方もできるし、ある意味、それはリズム隊が脆弱だったっていう。両方だと思うんだ、俺は。
で、ついに信用できる男に会ったというか。今年6月、モダンドールズ・トリビュートでレコーディングした「SODA POP」とう曲はドラムから始まってる。俺、池畑さんに言ったの。「俺はドラムから始まるのが夢だったんで、バカスカやってくれ」って(笑)。池畑さんは毎回同じことをやるんじゃなくて、毎回メチャクチャに違うし。そういうさ、俺がいちばん望んでる、生きてる毎日が同じじゃないじゃんっていうことを、すごく如実に出してくれる人で。とにかく1〜2回ライヴをやった時も、「とりあえず俺にまかしとけ!」って顔してグイグイ俺を押してくれる。そういう人にドラマーとして会えたのが、いちばんの収穫だった。
渡辺圭一というのは、ヤポネシアンで見事に復帰を果たして、今やJUDEというバンドでテレビに出たりしてる。アイツと俺には苦闘の歴史みたいなのがあって、若い頃俺もアイツにムチャクチャなこと言ってて、ムチャクチャな関係の頃があった。最悪だよ。俺が悪いんだけどね。
岡山のNO FEAR/NO MONEY企画が出してる『Pieces』という小冊子で、今年、渡辺圭一ロングインタビューが載っていて読んだら、俺のことをけちょんけちょんに言ってて、すごいうれしかったんだよね(笑)。俺、マゾじゃないけど。「ヨッシャー! これで対等だ!」みたいな。今アイツと俺は、もう兄弟みたいなもんで、でもどっちが上とかしたとかじゃないんだよ。ミック・ジャガーとキース・リチャードが何かを起こしたりとか、ジョン・レノンポール・マッカートニーがうまく説明できないすごいものを生み出したりとか、なんかね、バースと掛布と岡田がいたりとか。そういう意味においては、理論ではない理論を越えたところで、俺と渡辺圭一にしか出せないものがあるのは、お互い確実にわかってる。野性の呼び声のようなものが俺たちの間にはあるんだよね。アイツもやっとこうやって音楽に復帰して、今すごくいい感じでやってて。アイツも俺とバンドをやることにはすごく同意してるんだけど、「ヒートウェイヴ」って名前じゃ嫌だって言って。それはアイツも…今、対等って言ったじゃん。だからいいよって。じゃあわかった。とにかく今度のバンドは、「山口渡辺池畑細海」っていう名前にしたぞ、みたいなね(笑)。でもアイツとやれることはとてもうれしいね。
細海君は、今日長々と話したけど。アイツは「傾いてる」(※わりといつも首を傾けてます。オンステージもオフステージも)けど、アイツと俺は宇宙語で会話ができるから。
バンドって多くの場合、大なり小なりヒエラルキーのトップに君臨した人っていうのがいて、それを望んでる人間が支えてるっていう図式があるんだよね。大方そうだよ。でもフッと気が付くと、自分がなんとなく作りたくなかったヒエラルキーのトップに君臨しているこの矛盾? それがもう、俺が自分自身で耐えられないんだよね。だから君臨するとかそういうことじゃなくて、俺は誰にも負けない4分の1になりたい。誰がトップでも誰がボトムでもなんでもない。そういう人間関係があるじゃんっていうのが、俺がバンドを始めた時からの、1979年にヒートウェイヴを始めた時からの俺の理想だった。それをずっと引っ張って来ざるを得なくなっちゃったんだけど、だけどそういうのじゃない人間を見つけたから。そういうことも、俺たちの新しい音楽を聴いて、みんながわかってくれるとうれしいね。
この4人で、2003年1月15日、たった1回のライヴ、2日か3日しかリハーサルできないんだけど、でも演奏できることが本当にうれしい。やっとここまで来たよ。俺はバンドがやりたかったんだよ。そこでもの凄いことを起こす自信がなかったら、俺はやらないし。〉
そして、「野獣始動」直後の、「東京地獄新聞」第81号(2003年1月発行)より、再び山口洋のインタビューを抜粋。
〈バンドを20何年やって初めて、みんながフラットな位置からそれぞれ素晴らしい独立した個性を出し合って、今まで地球上にない感じの、少なくとも日本には絶対なかった感じのバンドができた気がする。
実質的にリズムって、揺れないのがシンガーにとっていちばん歌いやすい状況なんだけど、俺の場合は揺れても全然オッケーで、ようするにテンポが速くなっても遅くなっても全然大丈夫。それよりも気持ち的に、圧倒的な「柱」感というか、そういうものがあればどうなっても俺は絶対に対応できる。(池畑)兄貴がドラムを叩いた瞬間に、あの人に乗っかかるしかなくなるエネルギーがあるわけよ。完全に兄貴の気持ちがコントロールしている。俺はただそれに乗っかかるだけ。それがうまくいくときもうまくいかないときもあるんだけど、バンドに初めて「魂柱」みたいなものが、白いものがあのステージに立ってたんだよ。気持ち的なオーラ、エネリギーのオーラをビリビリに感じるしね。俺がバンドを引っ張っていく必要がない。完全に彼と渡辺圭一に委ねられている。圧倒的な寄り掛かり感がある。
圭一に関して言えば、アイツがもうバンドに戻ってきた時点で、俺がアイツの演奏にどうこう言うことは何もない。今回だって新曲やって、ある程度の方向付けというのはたしかに俺がやったよ。あとはアイツが勝手にやってるんだから。俺はアイツに勝てないものがある。感じるものがある。もちろん音楽的なところもあるんだけど、アイツが人間として、父親として家族を養ってるというすごさというのは、俺がその立場でできるかって言われたらできない。そんな状態でこんなバンドをやってるアイツの肝の据わり方っていうのは、人生を楽しむのだという、どんな状況でも楽しむのだというすさまじい気迫が実はある。その上でさらにあいつらしさを発揮している。そういう奴に、俺が何も言うことはない。
細海君に関して言えば、彼が以前ヒートウェイヴをやってたときは、「どこか一歩引いたところで付き合わなくちゃいけなかった」って言ってた。でも今度は完全にバンドなのだと俺が言ってると、彼のほうからいろんなアイデアが出てきて、彼がこんなふうにやりたい、あんなふうにやりたいって、俺が頼まなくても作ってくれている。
今までは全部自分が決めないと何も起こらなかったけど、アレンジ、照明、バンドの名前にしても俺の言ってることなんて全然通らないわけ(笑)。それが自虐的な意味ではなくて本当に素晴らしいと思う。〉
TOUR 2010 "光"
9月17日(金) 名古屋・HeartLand STUDIO
開場/開演=18時30分/19時30分
チケット料金=4,500円(税込/ドリンク代別途500円)
問=HeartLand STUDIO(Tel_052-202-1351)
9月19日(日) 大阪梅田・umeda AKASO(旧・BANANA HALL
開場/開演=18時/19時
チケット料金=4,500円(税込/ドリンク代別途500円)
問=ソーゴー大阪(Tel_06-6344-3326)
9月20日(月・祝) 福岡・DRUM Be-1
開場/開演=18時/19時
チケット料金=4,500円(税込/ドリンク代別途500円)
問=TSUKUSU(Tel_092-771-9009)
9月24日(金) 東京渋谷・duo MUSIC EXCHANGE
開場/開演=18時30分/19時30分
チケット料金=4,500円(税込/ドリンク代別途500円)
問=SOGO TOKYO(Tel_03-3405-9999)