2000年のインタビュー&写真集『HEATWAVE 1999-2000』

ヒートウェイヴの作品を取り扱うオンラインショッピングサイト「Artist-Direct Shop 405」で、2000年に出版したインタビュー&写真集『HEATWAVE 1999-2000』が、まだ売れ残ってる!
  270ミリ×210ミリ×104ページ(その半分がカラー写真)にとんでもない量の情熱と愛情を注ぎ込んだ入魂のヒートウェイヴ本。総文字数は17万8842字。当時、この本のために作った特設サイトもいつの間にか消えてしまったので、この欄で少しだけ紹介します。
  本の内容は、1999〜2000年に「東京地獄新聞」で行なったインタビュー・対談からこの本のために厳選した11本を再編集。さらにホームページに発表されたレコーディング・ダイアリー、30世紀(!)のヒートウェイヴを語りおろした山口洋最新インタビューなどを収録。一方ビジュアルは、1999年・2000年夏祭り、信州大学・伊那宅配便SPECIAL、Live the "LIFE WORK"、リアム・オ・メンリィ、アンディ・ホワイトとの共演など、ヒートウェイヴのこの2年間を追い続けたライヴ写真を満載。巻頭では、数多くの曲を生み出し、その数倍の曲をミックスした山口洋の自宅兼スタジオで撮影しました。
「東京地獄新聞」第70号(2001年2月発行)では、この『HEATWAVE 1999-2000』(通称「地獄本」)完成を記念して、表紙となった長野県伊那・「歌の宅配便」での撮影を始め、ヒートウェイヴの写真を撮り続けてきた写真家・関口美意氏と、編集部による、制作裏話的座談会を行なっていますので、そこから約1/3を抜粋します。
杉山(編集長) 関口さんは、99年の「夏祭り」で初めてヒートウェイヴを観たわけですよね。その時の感想は?
関口 名前だけ知ってて全然期待しないで行ったんですけど。でもすごくカッコ良くて、肌が合ったんでしょうね。全然知らなかったけど、こんな近くにこんないいカッコいい音を出すバンドがいるんだと。ファンになったというよりも近づいてみたい、そういうふうに思いましたね。
杉山 初めてヒートウェイヴの写真を撮った時はいつでしたっけ?
関口 リアムさんが来日した時の「極東地獄ラジオ」での撮影でした。お昼ご飯が喉を通らないぐらい緊張してたんですけど(笑)。「この前、初めてライヴを観たけどすごく良かったです」って言ったら、山口さんは「ああ、あれは弟のライヴ」とか言ってて、初めは本気にしてたんです。緊張してるからうまく受け答えができなくて。「あ、そうなんですか!?」って(笑)。だってライヴの時って、すごく混んでてよく見えなくて、音しか聴いてなかったから。でもあとで山口さんが話してる内容を聞いて、「あ、やっぱりこの人だ、騙された」って思いました(笑)。それがいちばん最初の撮影ですね。
杉山 ライヴを初めて撮ったのは?
関口 山口さんが、リアムさんのゲストで出たライヴをちょこっと撮って。ヒートウェイヴのライヴは、ON AIR EAST(99年12月「燃えるあひるツアー」)でしたね。
杉山 今まで印象に残ってるライヴは?
関口 もう何と言っても伊那の宅配便(『HEATWAVE 1999-2000』の表紙に掲載)ですね。最後に泣いたというエピソードも含めて。結果的に写真が失敗したということもあって、実は泣きのライヴだったんです(笑)。
杉山 そんなことないですよ!
関口 いや、だって失敗してるんですよ。かろうじて1枚……これだけは撮れてたらいいなぁという1枚が撮れてて、それだけがよかったんですけど。他のが全滅に近くて(笑)。
杉山 表紙の写真のように、ステージの上から撮影するなんてことは、普通のライヴではないでしょ?
関口 あの時は、トラックの荷台とビールケースでステージが作ってあったんですよね。野外だったから、横からでもどこからでも撮れる。みんな好きなことやって、物を食べながらとか踊りながらとか。すごく雰囲気が自由だったから、撮れる場所もたくさんあるなと思いつつ。とにかく観客と山口さんが、ほんとに喋ってるわけじゃないんですけど、対話をしながら、やりとりをしながら演奏している、その度合いがいつもより全然高くて。山口さんも写したいけど、観客を写したい、みんなを写したいなぁというような気分になって。
写真を撮ってる時って、そのライヴに参加しているよりも、みんなよりは参加してないような感じなんですよ、自分としては。私は写真を撮る時、対象に入り込むのと同時に一歩離れる作業が必要なんです。でもあの時は中にすごく入りたくて、それでたぶんひとりでステージに昇っちゃったと思うんですよ。私もその対話に参加したいな、もうちょっといつもより中に入りたいなという気持ちで。それで昇ったらちょうど陽が射してきて……。
杉山 表紙の写真は、雨が上がるようにグレッチを天に奉納するかのように弾き出した時の写真で、その直後に光が射したんだよね。
関口 雨が降っていて、屋根(テント)をつけるかつけないかという話で結局つけなかったじゃないですか。それでその後、少し晴れ間が出てきたからというので、祈りの意味を込めて、山口さんがステージ後ろを向いた瞬間にパーッて陽が射してきて。みんなで祈りを捧げてるみたいな状態で。
あの日は本当に祭りっていう雰囲気だったじゃないですか。だから光が射したのが当たり前っていうか。全然当たり前じゃないんですけど、本当に願いが届いたなぁみたいな。後から考えると、なんであんなふうになったんだろう、あのライヴは…という、そういう祭りの状態で。みんなのテンションがハレの部分に入っているというか、すごく特別なライヴだったですね。