『EPIC YEARS 1990 - 1995』のグラフィックデザインは駿東宏

theRising2010-07-27

ボックスセット『EPIC YEARS 1990 - 1995』のパッケージや、このボックスセットのために作られた80ページのブックレット(「THE LOGBOOK」)のデザインを手がけたのは、グラフィックデザイナーの駿東宏さん。
ヒートウェイヴではこれまでアルバム『1995』、『TOKYO CITY MAN』、『月に吠える』、シングル『BOHEMIAN BLUE』などをデザインしています。
今回のボックスセット制作の発火点となったのは、駿東さんディレクション、写真家・藤代冥砂さんによって15年前に撮影された一枚の写真。その写真も今回のブックレットに掲載しています。
山口洋とさまざまな逸話がある駿東さんですが、今回は2002年、トム・ラブランク、山口洋、細海魚によるアルバム『EAGLE TALK』に関するエピソード。「東京地獄新聞」第80号より抜粋。
―――アルバムタイトルの『EAGLE TALK』にはどういう意味があるのですか?
山口洋 レコーディングが終わった後にいろいろ迷うことがあるだろうと思ってたから、トムにひと言だけ言い残してほしいとリクエストした。迷った時には北極星を見ればこっちが北だなってわかるような言葉をこのプロジェクトのために残してくれって頼んだら、トムは「SAME SPIRIT」って言い残した。で、俺、何の疑いもなくアルバムタイトルも「SAME SPIRIT」だと思ってた。
そしたらデザインを引き受けてくれた偉大なるスントーヒロシが、音源を聴いた後に「山口さん、これはね、SAME SPIRITじゃない。『EAGLE TALK』ですよ」って言ったの。3人の魂が鷲みたいに飛びながら、いろんなものを見ていくというような光景が、自分には見えるんです。アルバムタイトルも『EAGLE TALK』にした方がいい!って、彼が。
彼、デザイナーだよ。だけど彼はそういうことを俺に言ってくれるから、俺は彼を尊敬してるわけ。それを聞いて「なるほど!」って。雷が落ちたように衝撃があった。「スントーさん、ありがとう! 俺もそう思うよ」って言って。トムが言った言葉をひっくり返すわけだから面倒くさいんだけど、それは(岡田)マサルにまかせた。俺はもう『EAGLE TALK』だ、プロデューサーの俺が決めたと。だからマサルに、トムを説得しろって言ったら、トムもいいよってアメリカから電話かかってきて。で、『EAGLE TALK』になった。
これでなんかゆがんでた背骨がピシッときた感じがあったんだよね。そしたらこのジャケットができ、ビデオクリップができ。スントーさんなんて頼んでもいないのに「EAGLE TALKのポスター作ったんすよ」とか(笑)。なんかすごいうれしいよ。金とかじゃないんだよね。みんなに利益がいけば俺はうれしいよ。うれしいけど、みんながこうやってウワーッてやるぞって、『EAGLE TALK』に向けて、みんな鳥になろうとしてるっていう……。長谷川博一さんが書いたコピーとか、「言葉は空を飛んだのか?」というコピーなんだけど、受け取った人の気持ちの中でいろんなふうに飛んでくれれば、本当にうれしいから。この厳しい世の中を生き抜いて行く方法みたいなことは、ここには全然書いてないけど、でもそういう世の中だからこういうことだってあるじゃん、みたいな。こうやってわかり合えることもあるし、わかり合えないこともある。そんなドキュメントとしては俺が過去に作ったアルバムの中でもいちばんそれがストレートに出てると思う。