「野獣始動」PLAY BACK


先週のエントリーに続き、山口洋、渡辺圭一、池畑潤二の3人による「トリオ・ザ・玄界灘」が、細海魚を加えた現体制のヒートウェイヴになる過渡期の記事を紹介します。2002年3月25日と同月29日にこの3人でステージに立ち、同年6月に博多の先輩バンド、モダンドールズのトリビュートアルバムにレコーディング参加。そこに、キーボーディスト細海魚を加えた4人編成のバンドが、2003年1月15日、渋谷ON AIR WESTでライヴを行ないます。バンド名の代わりに4人の名前が列記され、ライヴのタイトルは、「野獣始動」。
以下は、その2ヶ月ほど前の「東京地獄新聞」第80号(2002年11月発行)より抜粋した山口洋インタビューです。
〈俺の夢って、みんなが思ってるより実はすごいちっぽけなもので。今までヒートウェイヴの曲でドラムから始まってる曲ってないんだよ。カウントから始まってる曲もないし。もう滅多なことがないとドラムから始まれない。それはなんでかというと、ヒートウェイヴにおけるグルーヴマスターというのが俺だからなんだよね。俺がリズムを人に伝えて、それにドラムが入ってくるっていうふうにしないと、俺が思ってるいい音楽にならなかった。俺が人を信じてないっていう言い方もできるし、ある意味、それはリズム隊が脆弱だったっていう。両方だと思うんだ、俺は。
で、ついに信用できる男に会ったというか。今年6月、モダンドールズ・トリビュートでレコーディングした「SODA POP」とう曲はドラムから始まってる。俺、池畑さんに言ったの。「俺はドラムから始まるのが夢だったんで、バカスカやってくれ」って(笑)。池畑さんは毎回同じことをやるんじゃなくて、毎回メチャクチャに違うし。そういうさ、俺がいちばん望んでる、生きてる毎日が同じじゃないじゃんっていうことを、すごく如実に出してくれる人で。とにかく1〜2回ライヴをやった時も、「とりあえず俺にまかしとけ!」って顔してグイグイ俺を押してくれる。そういう人にドラマーとして会えたのが、いちばんの収穫だった。
渡辺圭一というのは、ヤポネシアンで見事に復帰を果たして、今やJUDEというバンドでテレビに出たりしてる。アイツと俺には苦闘の歴史みたいなのがあって、若い頃俺もアイツにムチャクチャなこと言ってて、ムチャクチャな関係の頃があった。最悪だよ。俺が悪いんだけどね。
岡山のNO FEAR/NO MONEY企画が出してる『Pieces』という小冊子で、今年、渡辺圭一ロングインタビューが載っていて読んだら、俺のことをけちょんけちょんに言ってて、すごいうれしかったんだよね(笑)。俺、マゾじゃないけど。「ヨッシャー! これで対等だ!」みたいな。今アイツと俺は、もう兄弟みたいなもんで、でもどっちが上とかしたとかじゃないんだよ。ミック・ジャガーとキース・リチャードが何かを起こしたりとか、ジョン・レノンポール・マッカートニーがうまく説明できないすごいものを生み出したりとか、なんかね、バースと掛布と岡田がいたりとか。そういう意味においては、理論ではない理論を越えたところで、俺と渡辺圭一にしか出せないものがあるのは、お互い確実にわかってる。野性の呼び声のようなものが俺たちの間にはあるんだよね。アイツもやっとこうやって音楽に復帰して、今すごくいい感じでやってて。アイツも俺とバンドをやることにはすごく同意してるんだけど、「ヒートウェイヴ」って名前じゃ嫌だって言って。それはアイツも…今、対等って言ったじゃん。だからいいよって。じゃあわかった。とにかく今度のバンドは、「山口渡辺池畑細海」っていう名前にしたぞ、みたいなね(笑)。でもアイツとやれることはとてもうれしいね。
細海君は、今日長々と話したけど。アイツは「傾いてる」(※わりといつも首を傾けてます。オンステージもオフステージも)けど、アイツと俺は宇宙語で会話ができるから。
バンドって多くの場合、大なり小なりヒエラルキーのトップに君臨した人っていうのがいて、それを望んでる人間が支えてるっていう図式があるんだよね。大方そうだよ。でもフッと気が付くと、自分がなんとなく作りたくなかったヒエラルキーのトップに君臨しているこの矛盾? それがもう、俺が自分自身で耐えられないんだよね。だから君臨するとかそういうことじゃなくて、俺は誰にも負けない4分の1になりたい。誰がトップでも誰がボトムでもなんでもない。そういう人間関係があるじゃんっていうのが、俺がバンドを始めた時からの、1979年にヒートウェイヴを始めた時からの俺の理想だった。それをずっと引っ張って来ざるを得なくなっちゃったんだけど、だけどそういうのじゃない人間を見つけたから。そういうことも、俺たちの新しい音楽を聴いて、みんながわかってくれるとうれしいね。
この4人で、2003年1月15日、たった1回のライヴ、2日か3日しかリハーサルできないんだけど、でも演奏できることが本当にうれしい。やっとここまで来たよ。俺はバンドがやりたかったんだよ。そこでもの凄いことを起こす自信がなかったら、俺はやらないし。〉
そして、「野獣始動」直後の、「東京地獄新聞」第81号(2003年1月発行)より、再び山口洋のインタビューを抜粋。
〈バンドを20何年やって初めて、みんながフラットな位置からそれぞれ素晴らしい独立した個性を出し合って、今まで地球上にない感じの、少なくとも日本には絶対なかった感じのバンドができた気がする。
実質的にリズムって、揺れないのがシンガーにとっていちばん歌いやすい状況なんだけど、俺の場合は揺れても全然オッケーで、ようするにテンポが速くなっても遅くなっても全然大丈夫。それよりも気持ち的に、圧倒的な「柱」感というか、そういうものがあればどうなっても俺は絶対に対応できる。(池畑)兄貴がドラムを叩いた瞬間に、あの人に乗っかかるしかなくなるエネルギーがあるわけよ。完全に兄貴の気持ちがコントロールしている。俺はただそれに乗っかかるだけ。それがうまくいくときもうまくいかないときもあるんだけど、バンドに初めて「魂柱」みたいなものが、白いものがあのステージに立ってたんだよ。気持ち的なオーラ、エネリギーのオーラをビリビリに感じるしね。俺がバンドを引っ張っていく必要がない。完全に彼と渡辺圭一に委ねられている。圧倒的な寄り掛かり感がある。
圭一に関して言えば、アイツがもうバンドに戻ってきた時点で、俺がアイツの演奏にどうこう言うことは何もない。今回だって新曲やって、ある程度の方向付けというのはたしかに俺がやったよ。あとはアイツが勝手にやってるんだから。俺はアイツに勝てないものがある。感じるものがある。もちろん音楽的なところもあるんだけど、アイツが人間として、父親として家族を養ってるというすごさというのは、俺がその立場でできるかって言われたらできない。そんな状態でこんなバンドをやってるアイツの肝の据わり方っていうのは、人生を楽しむのだという、どんな状況でも楽しむのだというすさまじい気迫が実はある。その上でさらにあいつらしさを発揮している。そういう奴に、俺が何も言うことはない。
細海君に関して言えば、彼が以前ヒートウェイヴをやってたときは、「どこか一歩引いたところで付き合わなくちゃいけなかった」って言ってた。でも今度は完全にバンドなのだと俺が言ってると、彼のほうからいろんなアイデアが出てきて、彼がこんなふうにやりたい、あんなふうにやりたいって、俺が頼まなくても作ってくれている。
今までは全部自分が決めないと何も起こらなかったけど、アレンジ、照明、バンドの名前にしても俺の言ってることなんて全然通らないわけ(笑)。それが自虐的な意味ではなくて本当に素晴らしいと思う。〉
TOUR 2010 "光"
9月17日(金) 名古屋・HeartLand STUDIO
開場/開演=18時30分/19時30分
チケット料金=4,500円(税込/ドリンク代別途500円)
問=HeartLand STUDIO(Tel_052-202-1351)
9月19日(日) 大阪梅田・umeda AKASO(旧・BANANA HALL
開場/開演=18時/19時
チケット料金=4,500円(税込/ドリンク代別途500円)
問=ソーゴー大阪(Tel_06-6344-3326)
9月20日(月・祝) 福岡・DRUM Be-1
開場/開演=18時/19時
チケット料金=4,500円(税込/ドリンク代別途500円)
問=TSUKUSU(Tel_092-771-9009)
9月24日(金) 東京渋谷・duo MUSIC EXCHANGE
開場/開演=18時30分/19時30分
チケット料金=4,500円(税込/ドリンク代別途500円)
問=SOGO TOKYO(Tel_03-3405-9999)

まだある、ミュージシャン仲間からヒートウェイヴへのコメント


2010年9月21日、ヒートウェイヴのメジャーデビュー20周年を記念して、1990年〜95年のエピック・ソニー時代にリリースされた全ての作品をコンプリートしたボックスセット『EPIC YEARS 1990 - 1995』が発売になります。
Sony Music Shopと、Artist-Direct Shop 405では、佐野元春さん中川敬さん(ソウル・フラワー・ユニオン宮沢和史さん(THE BOOM山川浩正さん(THE BOOMから寄せられたコメントが掲載されています。
今回は、『日々なる直感』への桜井和寿さんのように、これ以前のアルバムにミュージシャン仲間から贈られたコメントを紹介します。感謝を込めて。
それは2004年リリースのアルバム『LONG WAY FOR NOTHING』特設サイトに掲載されています。(五十音順/敬称略)
全面的に脳髄から汗。全面的に丘から光。全面的に壷から古酒である。ボク、ずっと落ちぶれてニューヨークで生ゴミになっている頃、サンシャインというタイトルの映画を見た。収容所で父親を殺された少年が婆ちゃんに抱かれてこんなことを言われるシーンがあった。Still life is beautiful.それでも人生は美しい。山口さんも同じことを歌っている。明日は生きていけるかもしれないと思うのは、こういう心に荒野の向こうから微笑まれた時である。
明川哲也
山口さん、初めまして。くるりの岸田と申します。ソウルフラワーユニオン中川敬氏からうかがうことが多いのですが、もしお会いする機会がありましたらどうすればあんなギターが弾けるのか教えて下さい。前作もかなり聴きこんでいたのですが、新譜、カッコイイです。
岸田繁(くるり)
1曲目の「STILL BURNING」を聴いて叫びたくなった。イェー! そう、ずっと待ってたんだ、この瞬間を! そして、最終曲「それでも世界は美しい」を聴いて確信した、 この歌に出会う為にこの5年があったと言っても過言ではないと。新生HEATWAVE。この最強のメンバーでやっている意味、この時代にやっている意味がこの曲、そしてこのアルバムにある。心震え、叫び、涙が流れるそんな瞬間。 HEATWAVE、ありがとう。
近藤智洋
きっと僕らより長いこと音楽をならしていて僕らより多くの曲を作っているはずだ。でもまた進化をとげている。スポーツ選手であれば成長することより経験を活かしたプレーへとスタイルが変わる頃なんだろうけど、HEATWAVEはまだ成長し続けることを望んでいる様に聞こえた。頭が下がります。
桜井和寿(Mr.Children)
ハートランドからの手紙#158
(一旦)家にすべてを持ち帰れ。山口と彼の新しいバンドが、故郷博多で新作レコーディングをしていると聞いたのは2003年の秋だった。僕は、この新作アルバムは彼にとっての'Bring it all back home'(dylan)と受け取った。その山口の新作が届けられこうして聞けるのは幸せだ。
佐野元春
おとなでなければできないロックンロール。なのに、昨日初めて楽器を手にしたかのような初々しさは少年のまま。男はこうでなくちゃ。Keep on burning!
沢知恵
歌の言葉には言い放しのようなところがある。言い放して去って行く。それはとてもかっこいいかもしれない。だけど山口洋はまた言い放した場所にまた戻って来る。言い放しては戻り、言い放しては戻りを繰り返す。それはとてもかっこわるいのかもしれない。だけどぼくはかっこわるい山口くんの方を信じる。彼が言おうとしていることに耳を傾ける。彼の情熱と繊細さ、深い魂のようなギターの音色に。細かい人物描写の積み重ねには人間へのこだわりが感じられる。言い放しを許さないものがそこにある。
友部正人
アルバム「日々なる直感」(中川敬ドーナル・ラニー入りの極上盤)から五年。
山口洋にとっては多忙な「活動休止期間」を経て、ヒートウェイヴが帰って来た!
メンバー一新である。
ドラム池畑潤二、キーボード細海魚、ベース渡辺圭一。
山口洋流ロックンロール、「ヒートウェイヴ」の実現にとって、現時点で考え得る最強の布陣であろう。
奔放、緻密、諦観、抵抗、焦燥、咆哮、金玉、自由、ハナ、誰もいない庭……。
国際的休日、それは、もう一人の君と出会うまでの千鳥足の旅路。
そして、夢の底から歌を紡ぐとき、丘の上のアホの側にはいつもロックンロールがあるのだ。
ベスト・アルバムLONG LONG WAY -1990-2001-」と本作「LONG WAY FOR NOTHING」を携えレジへ。
世に溢れるニセモノとホンモノを見極めよ。
ハナクソ共に引退勧告を。
そして行動派にこそ、このアルバムを。
中川敬(ソウル・フラワー・ユニオン/歌手)
LONG WAY FOR NOTHING。
それ以上でもそれ以下でもない、
まるで海をひたすらすべってゆく波のような果てしない道のり。
「あきらめるな」と云い、時には「それでいいんだ」と云ってくれ、
時には「なに難しい顔してんの?」とブサイクな顔をしながら茶化してくる。
泣いていても 笑っていても 間違いなく終わってゆく 今日とゆう日を
限りなくうたい続けているのだなぁと思う。
風が冷たくて気持ちのよい秋晴れの日 このアルバムを初めて聴いた。
東京の空が 高く 遠く どこまでも青だった。
ノマアキコ(GO!GO!7188)
「5年ぶりのノックは僕達の新しい扉を開けてくれて、闇から少しずつ光を与えてくれた」
BIKKE(ナタリー・ワイズ)
「ROCK」から言葉が聴こえてこない。
言葉を発していても何も言っていない。
僕はたそがれた「ROCK」が好きではない。
夕焼けだけを見つめていても生きてはいけない。
「ROCKは約束の音楽だ」といった人がいたが
山口洋の音楽には約束がある。
時には人を安らかに眠らせ 時にはふるい立たせる。
僕は山口洋の言葉を信じている。
宮沢和史(THE BOOM)
「待ってましたーー!!このままもうHEATWAVEで出してくれないの?こんなにも待ち焦がれているのにぃー、っと心に小さな穴を抱えて過ごしてた若造に、願っていたROCK'N ROLLが鳴り響きました。他の誰でも埋まらない山口さんのメッセージとHEATWAVEのグルーブで、ただただ、熱い身体になるのでした。ライブ前にね、HEATWAVEの曲を聴くことが多いのです。そこには、汚れ無きROCK'N ROLLと音に収まりきらない情熱があるから。これからも、私を奮い立たせてください!
矢井田瞳

映像作家・渡辺圭一インタビュー 2/2

昨日のエントリーに続き、映像作家・渡辺圭一インタビュー後編。映像監督としての処女作、2004年のヒートウェイヴツアーDVD『OFFICIAL BOOTLEG』について。「東京地獄新聞」第91号(2004年9月発行)より。
―――ところで、最初からおぼろげにでも全体像があっって、こういうものにしようと思い描いて作っていたんですか?
渡辺 ん? ないないない。そんなもんまったくなし。たぶんプロの映画監督や、普通監督とかディレクターとか呼ばれる人たちは、(構想を)大体組み立てあげてから撮影に入るよね。当然絵コンテもあるだろうし、最初にこういうシーンが必要だというのもあるわけでしょ。たとえばスクリーンの色までわかってて荒い映像にしたいとか。でもそんなのわかんないから。まったく何していいかわかんなかったから。
―――でも、いわゆるプロの人じゃなくて圭一さんが作ったことで、結果的に圭一さんなりの自分らしさが出たと思うんですよね
渡辺 それはメンバーだからさ。素材の中からこのシーン、あのシーンってチョイスするのは、メンバーであるオレじゃないとできないことじゃないかなとは思う。普通の人はたぶんこれ出したらマイナスだろうなって思う画でも、オレの視点から言ったら、イメージとか関係ないから。でも、もうちょっとねぇ……とか思って。会場じゃないところで、金沢だったら金沢で、兼六園を歩いてるところでも撮ろうよとか。そういうことを今になったら思いつくわけよ。最初から作ることが決まってたら食中毒で入院した時も絶対カメラ回してた!
でも(編集は)メンバー、スタッフがいろいろ力を貸してくださってね。魚ちゃんとか迷惑かけたもんね。夜中にコンピュータ動かんとか言って持ってって、「魚ちゃん何とかしてくれ!」とか。魚ちゃんも「困ったら電話してきてくれ」って言ってくれって。で、朝方6時頃に電話してみて、「起きてる?」って聞いたら、見事に起きてるんだよね(笑)。
今度もしやるとしたら、ちゃんと最初っからプロジェクトを組んで、作るための映像が欲しい。編集するための。それともうちょっと時間を。今回はこの間にライヴのリハとかあって、やっぱり頭の中がとっちらかってくるでしょ。そこを切り替えるのがね。ま、ウチには池畑潤二というすばらしい役者がいるから。ブルーリボン賞だね(笑)。
では続いて、同じく『OFFICIAL BOOTLEG』について山口洋へのインタビュー。
山口 今までヒートウェイヴの作品というのはほぼすべて主体的に能動的に俺が関わってきたわけだけど、映像だけはこの男がやればいいじゃんと思ったわけ。だからもう完全に丸投げ(笑)。あいつのやる気を引き出すために30時間ぐらいあったビデオ素材を4時間ぐらいにカットするところまでは俺も手伝ったけど、あとはもう何もしてない。
あいつのいいところは全体を見てるんだよね。俺はどう見られたいとか見られているというところにあまり興味ないんだけど、そういうところにあいつはちゃんと意識を持ってるんだとわかった。俺が一所懸命やらなくても初めて勝手にできあがったヒートウェイヴ名義の作品だから、すごくうれしかったね。それがうれしくて見ちゃうもん、俺(笑)。見ると、結局池畑潤二という人もみんなすごく愛してて―――池畑潤二という魂の柱がバンドの中心に立っているから―――みんな好きなんだよ、あんな人いないしね。ある種、池畑さんに失礼な編集をしてるかもしれないけど、そういうところを含めてみんな池畑さんが大好きだからね。見た人が「これ、池畑潤二のDVDじゃん」って言うんだけど、「そうですよ」って(笑)。ヒートウェイヴは実はそうだからって。今回の作品は音的には俺と魚ちゃんが担当して、映像、デザインを圭一がやって、(池畑)兄貴は存在自体で大貢献してるわけだけど、今、兄貴がツアーTシャツを作ってるらしくて、バランスよく役目がナチュラルにできてきていいと思うよね。
これからの時代は音楽業界も革新的に変わっていかないと生き残れないと思うし、そういった意味では自分たちの方法論を見つけつつあるからいいんじゃないかなあ。自分たち4人いればできちゃう、大変だけど(笑)。
―――いま、渡辺監督に言いたいことは?
山口 お疲れ。しばらく映像はやりたくないって言ってたけど、それも俺がミックスしててもうしばらく音楽聴きたくないって思うのと一緒で、作る喜びというのは彼も絶対あったと思うんだよね。まあ、また作るんじゃないの? ツアーのドキュメンタリーという形じゃないと思うけど、あいつの新たな才能なわけだから。俺は、今までいろいろやってきて、バンドのメンバーに「今日は疲れてるだろうから早く帰っていいよ」って言ったことはあったけど、「もう帰っていいよ」って言われたのは、今回初めてだった(笑)。KiLAのツアーの合間にちょっとだけ圭一のとことに行ったら圭一に言われたんだ。「俺に任しとけ」って意味なんだけどうれしかったね。DVDは最後まで責任持ってあいつがやったんだよ。

映像作家・渡辺圭一インタビュー 1/2

デザイナーとしても『land of music』『LONG WAY FOR NOTHING』『Live at Cafe Milton』のジャケットなどを手がける渡辺圭一が、ルースターズのライヴDVD『IN THE MOTION』(今年4月発売)を監督しました。
映像作家・渡辺圭一として、当blogでも当然『land of music "the Rising"』について第6回第18回でインタビューしていますが、今回は映像作家としてのキャリアのスタートとなった、2004年、ヒートウェイヴツアーDVD『OFFICIAL BOOTLEG』インタビューを抜粋して紹介します。
最初に出てくる文字は「HEATWAVE presents」。SHIBUYA-AXの楽屋、カメラを手にしているのは渡辺圭一。本作品の監督。山口洋池畑潤二池畑潤二と細海魚、次々と交わされる握手。そのカメラの動きから、これがアンコールでステージに出ていく直前の生々しい映像ということがわかる。ステージに登場し歓声で迎えられるメンバー。これがツアーDVD『OFFICIAL BOOTLEG』のオープニングだ。
SHIBUYA-AXのライヴシーンを除いて、撮影はツアースタッフか渡辺圭一が行なっている。専属の撮影スタッフがいたわけではなくて、それぞれの仕事をしながらの撮影だから(つまりリハーサルを撮ってた映像があるということは、その間は仕事をサボってたわけ?)、東京公演以外のライヴシーンは少なく、その分オフステージの映像は、たぶん読者の想像以上に多い。 手持ちのデジカメならではの機動性と(その分、ブレたりしてるところや、東京以外の会場のライヴ映像が固定ワンカメなのもBOOTLEGっぽい)、メンバー&もっとも身近なOFFICIALツアースタッフが撮影している、というこれ以上にない密着感。これが『OFFICIAL BOOTLEG』のタイトルの由来か。
地獄新聞89号で語られた、金沢シジミ中毒地獄や大阪フォークデュオ、バッティングセンターでの殿馬化した細海魚の秘打、池畑潤二劇場など、さまざまなツアー・エピソードが映像で追体験できます(食中毒なんて体験したくないけど)。
しかし、しかし、これが楽屋落ち的ツアー珍プレー集で終わらないのは、要所要所に挟まれるSHIBUYA-AXでの全5曲のライヴ映像があるからだ。「なんで"ビール早飲み選手権"なんてやってんだよー、この人たち(←真似しないように)」なんて思っても、ライヴはかっこいいのです。ツアーに参加した人はもちろん、このバンドのライヴを観たことない人にぜひ観てほしい作品です。渡辺監督素晴らしいです。ということで「東京地獄新聞」第91号(2004年9月発行)のトップ記事は渡辺圭一インタビューです。
渡辺 もともとさぁ、ツアー始まる前にみんなでミーティングして、DVDを作ろう、そのためにカメラを回そうよって始まったことじゃないでしょ? おぼろげに覚えてるのは、とりあえずなんか使えるかもしれないからカメラ回しておこうよって。でもツアースタッフがワンカメでただ撮ってただけで。アイツも後でどういうものになるか、まさかDVDになるなんて思わないから、ただ観光記念みたいな気分でボタン押してただけでしょ。で、チョコチョコ撮ってるうちになんかおもしろそうだから「オレにも撮らせろ」って言って、オレが撮ったりしてたんだよね。
―――ツアーの途中で、DVD作ろうみたいな話になったんですよね。
渡辺 カメラ回してるんだったら記念になるものを作りたいねって話はあったけど、そのときは全く具体的じゃなかったよ。最初は次のツアーのときに何かリリースしたいねという意見もあって、CDが出せたらいいなということで各会場でテープを回して録音しとったわけでしょ? そのおまけで映像のDVDがあればいいでしょって。それがツアーが終わる頃にはおもしろいシーンを押さえ出して……。だからツアー最初のほうの映像はあまりないもんね。
―――でも、SHIBUYA-AXのときはもう自分でカメラ持ってステージに上がってたわけですよね。その時点で構想…とまでは大げさじゃないかもしれないけど、こんな映像があったらおもしろいな……ぐらいの考えはあったんですよね?
渡辺 確かに、ミュージシャン=当事者としての視点というのはおもしろいだろうなとは思ってた。オリンピックでも、開会式とかで選手がカメラやDVDカムを持ってるでしょ。選手が見てる映像、観客に囲まれた独特の空気というのは、オレたちにはわかんないもんね、その視点を知りたいっていうのはあるじゃん。そのカメラの映像を見てみたいって。どんなこと話してて、どんなに盛り上がってんのかとかさ。
―――圭一さんからいろいろアイデアが出たから、「オマエが監督やれ」ということになったんですよね。もともと映像を作ることに興味はあったんですか?
渡辺 おぼろげにね。でも自分のキャパシティの底がわかんないから。ソフトなんかも知らなくて、映像ソフトって何? どのソフト使えばいいの?っていう(笑)。たとえばオペレーターの後ろでふんぞり返って「この画を先に入れて、フィルターかけてどうのこうの」って指示するんだったらまだわかるよ。でも予算の都合上、スタジオ押さえられるわけじゃないし、そういう人もいないし……。まずはヒロシ(山口洋)が20何本のテープをデータにしてくれた3時間分の映像があったでしょ。それをコンピュータの画面に出すだけで何週間か過ぎた。その間に2つのソフトを覚えたからね。わかり始めたときは楽しいよ。大体、こうしたいけどそのためにはどうすればいいんだ!?ってとこで停滞するじゃん。映像に文字を入れたいのに文字の入れ方がわからん。最初に「HEATWAVE presents」っていう文字を入れるのに2週間ぐらいかかった(笑)。で、20分間分ぐらい作ったときに、じゃあこの方向で進んでいけばいいんやって思ったのに、そこから(映像編集ソフトが)「ファイナルカット」に移ったじゃん。それまでに出来上がったのをそのまま持っていけないわけよ。じゃ、またイチからじゃん。イチから、こっちのソフトで文字を入れるには?って。もー切腹したかったよ(笑)。
―――やっぱり楽しかったことより、苦労したことのほうが多いですね。
渡辺 あー、でも苦労とは思ってないよ。これも試練だし。だって何らかに役立つことじゃん。そのときにものすごく知識のある人が横にいたとしてね、訊くのは簡単だけど、それじゃたぶん身につかないと思う。そうじゃなくて自分で調べる、それがいい。自分がこうしたいというためには研究するじゃん。それが大事かもね。(続く)

9月のツアーでボックスセット、会場先行販売


ヒートウェイヴのメジャーデビュー20周年を記念して、1990年〜95年のエピック・ソニー時代にリリースされた全ての作品をコンプリートしたボックスセット『EPIC YEARS 1990 - 1995』は、Sony Music Shopと、Artist-Direct Shop 405で予約受付中。また、9月のヒートウェイヴのツアーで会場先行販売されます。
TOUR 2010 "光"
9月17日(金) 名古屋・HeartLand STUDIO
開場/開演=18時30分/19時30分
チケット料金=4,500円(税込/ドリンク代別途500円)
問=HeartLand STUDIO(Tel_052-202-1351)
9月19日(日) 大阪梅田・umeda AKASO(旧・BANANA HALL
開場/開演=18時/19時
チケット料金=4,500円(税込/ドリンク代別途500円)
問=ソーゴー大阪(Tel_06-6344-3326)
9月20日(月・祝) 福岡・DRUM Be-1
開場/開演=18時/19時
チケット料金=4,500円(税込/ドリンク代別途500円)
問=TSUKUSU(Tel_092-771-9009)
9月24日(金) 東京渋谷・duo MUSIC EXCHANGE
開場/開演=18時30分/19時30分
チケット料金=4,500円(税込/ドリンク代別途500円)
問=SOGO TOKYO(Tel_03-3405-9999)
山口洋、渡辺圭一、池畑潤二、細海魚の4人がステージに揃ったのは、2003年1月15日の渋谷ON AIR WEST。まだ「ヒートウェイヴ」との名を冠せず、バンド名ではなく出演者として4人の名前を列記、「野獣始動」と称されたこの夜のライヴが、現在のヒートウェイヴに繋がりました。
しかし、その前、2002年3月25日に「トリオ・ザ・玄界灘」なる、山口洋、渡辺圭一、池畑潤二によって行なわれたステージが、この起源となったのです。以下に当時のライヴレポートを掲載します。
〈(前略)そして登場したのは、ベースの渡辺"地獄"圭一と、「オレと圭一がガキの頃からのヒーロー」と山口さんが紹介した、元ルースターズのドラマー、池畑潤二。この「玄界灘」と名付けられた純九州人トリオバンドの初お披露目。一曲目は「INTERNATIONAL HOLIDAY」。池畑さんは大きな太鼓(バウラン)を抱え、ジャングルな雰囲気いっぱいのビートを叩き出した。進化を繰り返すこの曲が、また新たな魂のグルーヴを得た瞬間だ。続いて「水中にお連れします」の曲紹介で始まった「スウィム」。それは一見クールに感じた水の中に、いつのまにかどろりとしたマグマが流れ出すような、静かで熱いうねりを感じさせる演奏。立て続けに底力を見せ始めたところで、はやくも前半終了、15分の休憩。
後半戦は堂々たるインスト「ヒヲウのテーマ」から、爆音のロックンロール大会へ突入。体中からリズムを放出する。池畑さんのパワフルなドラムスタイルを目の当たりにして、圧倒されっぱなし! 「NO REGRETS」「荒野の風」……凄まじいテンションの音が鳴り続ける。「NO FEAR」では、ふとした瞬間にバンドの息が乱れた。曲を止めぬまま、サビからリベンジの合図をする山口さん。初ステージのトリオ、どうなるのか?と思ったら、一度でバッチリとはいかなかったけれど、後方から二人の様子をジッとのぞき込み、タイミングを見守る池畑兄貴の表情に、大きなやさしさを見てとれたひとコマだった。そして全編で山口さんが、そんなすべてのグルーヴの上に身を預けて、ギターを弾き歌を歌っている表情が実に印象的だった。
アンコールでは、渡辺さんの「オレたちスゴイ髪型になってると思うよ」のひと言から、タオル巻きタイムへ(頭部の大きさのためか悪戦苦闘)。トリオ・ザ・タオル頭。ユーモアも味方につけて、加速したま一気に駆け抜ける。ラストは渡辺さんが歌う「CHICKEN SHIT」。ボーカルマイクにエコーをこれでもかとかけ、まるでヘヴィメタの世界! 破壊的なまでに強力なステージが終わりゆくのを、見届けた満足感は格別だった。〉(「東京地獄新聞」第77号/文=下村祥子)

Bank Bandがヒートウェイヴをカヴァー!

沿志奏逢 3

櫻井和寿さん、小林武史さんを中心とするバンド、Bank Bandの6月発売のニューアルバム『沿志奏逢3』にヒートウェイヴの「明日のために靴を磨こう」がカヴァーされ、収録されています。
今週末開催の野外フェス「ap bank fes」のサイトに掲載の櫻井和寿さんのインタビューでは、この「明日のために靴を磨こう」カヴァーについて、
〈そもそも歌には、歌っている人の容姿とか生き方とかが見えた方が説得力持つものと、それを度外視して歌だけが一人歩きして、リスナーと共に育っていくものがあるんだと思うんです。で、僕はこのBank Bandでは、あと最近ではMr.Childrenでもそうだけど、後者の方になりたいと思ってて。なのでHEATWAVEの 「明日のために靴を磨こう」なんかは、実はオリジナルを真似た歌い方も得意なんだけど(笑)、さっき言ったポップ・ソングとして一人歩きして欲しいという想いもあって、そんな歌い方になってるんですけどね。〉
〈最後にパ−カッション・ダビングをしたんですけど、ただ歌の内容とかだけ取ったら、あんな軽快な、ちょっと可愛らしいカウベルの合いの手とかは入らないと思うんです。もしMr.Childrenでこういう曲出来上がったとしても、絶対に入れなかった。でもあそこで藤井珠緒さんの女性らしい感性が加わることで、凄くBank Bandっぽくなったなぁと思います。〉と、語られています。また、同サイトではヒートウェイヴの原曲もこちらに紹介していただいています。
Bank Bandは昨年夏の「ap bank fes '09」でもこの曲を演奏。その模様は、DVD『ap bank fes '09』に収められています。
2004年に発売のアルバム『沿志奏逢』には、「トーキョー シティー ヒエラルキー」のカヴァーが収録されています。2004年11月のBank Bandの恵比寿公演を観に行った山口洋は、当日の日記にその感想を記しています。
上記の画像は、ヒートウェイヴ、1999年リリースのアルバム『日々なる直感』のフライヤ。桜井和寿さんにコメントを書いていただきました。
現在開催中の「ap bank fes '10」が成功しますように!

デビュー20周年記念ボックスセット情報


2010年9月21日、ヒートウェイヴのメジャーデビュー20周年を記念して、1990年〜95年のエピック・ソニー時代にリリースされた全ての作品をコンプリートしたボックスセット『EPIC YEARS 1990 - 1995』が発売になります。
1990年10月、メジャーデビュー・アルバム『柱』から、『凡骨の歌』、『陽はまた昇る』、『NO FEAR』、『1995』の5枚のアルバムと、同時期に発売された全シングル曲と未発売曲「(WHAT'S SO FUNNY 'BOUT) PEACE, LOVE AND UNDERSTANDING」を、すべてリマスタリングして収録。
また、『凡骨の夏』ライヴ映像+ビデオクリップ5曲(「ON MY WAY HOME」「明日のために靴を磨こう」「オリオンへの道」「満月の夕」「BRAND NEW DAY/WAY」)を収録したDVDを同包。さらに、2010年最新インタビューによる山口洋の全アルバム解説や、撮り下ろし写真を掲載した80ページのブックレットを含む、5CD+1DVD+1BOOKのボックスセットです。
完全生産限定盤につき、Sony Music Shopか、Artist-Direct Shop 405での予約か、9月のヒートウェイヴのツアー会場での販売のみになります。8月15日(日)までにご予約の方には、特典としてもれなく山口洋が撮影したオリジナルポストカードセットを差し上げます。
ソニーのサイトには、佐野元春さん、中川敬さん(ソウル・フラワー・ユニオン)、宮沢和史さん(THE BOOM)、山川浩正さん(THE BOOM)から寄せられたコメントが掲載されています。
なお、10年前の2000年夏には、ヒートウェイヴ・デビュー10周年記念「地獄ウォーク」というとんでもない企画が「東京地獄新聞」66号で発表されていました。
〈今から約200年前、測量の旅を始め、日本地図を作り上げた伊能忠敬。「歌の宅配便」も彼の功績がなければ存在しなかったと言っても過言ではないでしょう。ヒートウェイヴ・デビュー10周年を記念し、今年は「地獄ウォーク」(地獄新聞社主催)を実施、各地の宅配便開催地を徒歩で廻りながら測量します。すでに本部隊員は5月27日、伊那をスタートし、次の目的地、福山に向かっています。キミも日本全国にその足跡を残し、平成の伊能忠敬として新たな地図を描いてみませんか。/1stステージ=伊那(237)+福山(982)+奈良(555)+富山(381)=2155キロメートル。※カッコ内は東京・日本橋からの距離。〉